『送厄迎福』

 *俗世間*

 歳の瀬の大晦日になると数キロと離れた須磨寺の鐘が鳴り響いていた。新年を迎える合図でもあった。その鐘の音は108回打ち響くと友人たちが語らっていた。108の人間の煩悩の厄を送り去り新たな年を迎えるためだと言うことのようであった。子供の説明なので承知しがたいが、意味は分からずとも煩悩というものが悪しきものだと思われた。いつしか、その「除夜の鐘」の音は消えてしまった。喧噪なテレビから流れていた。

 

送厄迎福をお願い致し候。